新しい機能性材料の開発と触媒応用 (English version)

当研究室では、クラスター材料を機軸とした高性能触媒の開発、二酸化炭素変換や未利用エネルギー活用を指向した新規触媒反応系の探索、電気化学的手法を駆使した新規触媒材料の開発、局所原子配列制御による無機固体の新奇電子物性探索を進めています。さらに、放射光X線吸収分光やオペランド計測により、反応中の電子状態変化を精密に解析し、次世代の機能性材料の設計指針の構築を目指しています。

 

以下にそれぞれの研究の概要を示します。

(1) 金属酸化物クラスターおよび金属クラスターの触媒機能開拓

クラスター材料は、バルクとは異なる電子状態に由来して多様な機能を示し、特に触媒機能の発現が注目されています。当研究室では、V族金属(Nb, Ta)からなる酸化物クラスターが耐水性の超塩基触媒として働くことを見出し、その塩基性発現の起源解明に取り組んでいます。また、金属ナノ粒子との複合化による高性能触媒の設計にも取り組んでいます。さらに、金属クラスターにも着目し、組成・サイズ・配位子・といった構造因子が電子状態および触媒活性に与える影響を精密に解析し、高活性触媒への展開を目指しています。

(2) 環境調和を目指した新しい触媒反応系の開発

環境問題の解決に向けて、二酸化炭素変換技術、未利用エネルギーの活用、低エネルギー駆動型物質変換技術の開発が求められています。当研究室では、触媒を用いた二酸化炭素の固定化・回収・利用技術の開発に加え、振動エネルギーを利用した新規触媒反応系や、特異な幾何構造・バンド構造を活かした低温触媒反応の構築に取り組んでいます。さらに近年では、無機材料にとどまらず有機材料も対象とした二酸化炭素吸収材料の開発も推進しています。

(3) 電気化学

準備中

(4) 無機固体物質における電子物性の開拓

遷移金属酸化物に代表される無機固体物質は、高温超伝導や超巨大磁気抵抗効果など多彩な電子物性を示します。近年、私たちはNi酸化物において局所的な原子配列を精密に制御することで、電気伝導性を大きく変調できることを見出しました。当研究室では、局所原子配列制御に基づく磁性・超伝導などの新規電子物性の開拓や触媒機能の創出、薄膜デバイスへの展開、さらに、X線吸収分光法による原子配列と電子物性の相関の起源解明を目指しています。

(5) 放射光分光を用いた電子状態・局所構造解析、およびオペランド計測

触媒材料の合成過程や反応中における構造(コア構造、ドーパント位置、界面構造)および電子状態の動的変化を理解することは、機能発現機構の解明に不可欠です。放射光 X 線吸収分光法は、目的元素の電子状態と局所構造を元素選択的に解析でき、さらにミリ秒~秒オーダーでスペクトル取得が可能であることから、反応中の状態変化をその場観察することができます。当研究室では、静的な X 線吸収分光測定に加え、紫外可視・赤外・ラマン分光、ガスクロマトグラフィー、質量分析などを組み合わせたオペランド計測により、触媒作用および合成機構の解明を進め、次世代機能性材料の設計指針の創出を目指しています。また、幅広い分野の研究者との共同研究も積極的に推進しています。